仰天イカモノ堂

Xserve RAID vs Software RAID

貧民のための高速大容量ディスク構築術

ハードディスクの大容量化と低価格化は目を見張るばかりである。そんなおり、低価格ハードディスクを、Mac OS XのソフトウェアRAID機能を使って束ね、アップルが誇るストレージ製品の最高峰Xserve RAIDと戦わせてみたくなっても不思議ではない。ないったらない。

実はソフトウェアRAID機能の存在を知った時から一度やってみたかったのだが、今回、某G社様のXserve RAIDのメンテナンスを行うことになり実戦投入の機会が巡って来た。

では早速、株式会社バッファローの外付けハードディスクHD-HBIU2を4台、ディスクユーティリティのソフトウェアRAID機能を使って250GB×4=1TBのストライピングRAIDボリュームとして構成。(以下、チーパーレイドと呼ぶ。)これをXserve RAID内の約1TBのデータを一時退避する場所として使うついでに対決を行った。

Xserve RAIDの上に乗っかってるのがチーパーレイド。

チーパーレイドの成り立ち

チーパーレイドはPower Mac G4 1.42GHz Dualに接続した4台のハードディスクをMac OS X v10.3.5のソフトウェアRAID機能で束ねたもので総容量1TB。その妄想上のデータ転送能力は、増設した3枚のFireWire PCIカードによってそれぞれのディスクあたり400Mbpsとなり合計400×4=1.6Gbps。 Fibre Channel(2Gbps)には及ばないがかなりのスピードだ。

※ドライブ単体で300GB以上のディスクも発売されているし、FireWire800インターフェースを搭載したものもある。これらを使えばもっと高速大容量にもできるが、そこは「チーパーレイド」なので現時点でコストパフォーンスがほどよくバランスしている250GB外付けFireWire400ハードディスク4台を組み合わせることにした。

これを使って、Power Mac G5 2.0GHz Dualに接続されたXserve RAID 3.5TB(の片肺1.75TB)と勝負する。なぜ片肺かといえばXserve RAIDのハードウェアは3.5TBの1つの巨大なディスクではなく1.75TBのディスク2つが1つの筐体に納められたものだからだ。(カタログからは読み取りにくく勘違いしやすいがRAIDコントローラは冗長構成されていない。「ドライブ、電源ユニット、冷却モジュール、バッテリーユニットはすべて二重化されホットスワップに対応」と書かれているが、どこにも「RAIDコントローラを二重化」とは書いていない。「独立」と書いてある。あわて者は買ってから気付く仕組みである(^^;。)

お値段比較

チーパーレイドが圧倒的に安い(それを狙ったんだから当たり前)。

速度比較

I/Oブロックサイズ256KBで10GBのファイルを書き込んで(シーケンシャルライト)転送レートを割り出してみた。かかった時間はXserve RAIDが118.22秒、Power Mac G5内蔵SATA 250GB HDは219.22秒、チーパーレイドは101.73秒。転送レートを計算してみると。え?

意外なことにチーパーレイドが最も速い(?_!)。Xserve RAID圧勝の予想だったのだが、なぜにこのような?

お昼前だったのでお腹が空いて幻覚が見えたのかもしれない、念のためアップルに電話して「すいませ〜ん、ちっともスピードが出ないんですがこのXserve RAID壊れてますか?それとも正常でもこんなもん?壊れてるなら修理をお願いします。」と、すっとんきょうなお願いをしてみた。「お客様のご使用になっている環境によって転送速度は異なって参りますので、どの程度の転送速度が正常とは一概には申し上げられません。」模範的回答をいただいた。

しかし「お客様の環境によって」と言われても──メンテナンスのためにXserve RAIDのファームを最新にしてG5のシステムもクリーンインストールしたんで、ついでにベタファイル書き込んでスピード計ってみただけなんですけど(^^;。

弁当を食べてお腹がくちくなってから計り直してみても同じであった。なんか間違えてファイバーチャネルが1Gbpsモードになってしまったのであろうか?

ちなみにアップルのWebサイトに掲載されているXserve RAID 3.5TBの最大実効転送レートは336MB/s(シーケンシャルリード、1チャンネルあたりだと168MB/s)である。Iometerで計ったとあるので、同じソフトで調べてみようと思ったのだがIometerのMac OS X用のバイナリってないみたい。まさか他人んちのマシンにデベロッパツールを入れてソースからビルドするちゅうわけにも……

いかないので、ゾーンゼロ方式のままブロックサイズを4MBにしてシーケンシャルリードを計測したところ1チャンネルあたり130MB/s程度出ていることが分かった。シーケンシャルライトはブロックサイズ4MBでもほとんど変わりなし(87MB/s程度)。

チーパーレイド善戦ではあるが

速い安いチーパーレイドだがこれで済むならXserve RAIDはいらんわけで、様々な欠点がある。

取り扱いが面倒
RAIDを構成したのをすっかり忘れてて、RAIDセットに使っているディスクのうちの1台を誤って初期化しちゃうとか(^^; ……した日には目も当てられない。ディスクの台数が増えるにしたがって場所は取るし、そこら中ケーブルだらけ。
不安定
ディスク4台を同一バス上にFireWireハブを介して、または芋づる式に接続した場合、数百ギガバイトを連続で読み書きしていると途中でマックがハングアップしてしまうことがたまにある。これはかなりひどい状態でドライバ(カーネルレベルの処理)が寝込んじゃってるみたいなので電源を切るしかなくなる。FireWire PCIカードを増設すると治まるが、それでも同じ現象が起こらないとは言い切れない。
高性能マシンで遅い
なぜチーパーレイドの性能をPower Mac G4を使って調べたのか?Power Mac G5で試せばもっと良い結果になるんじゃないのと思われるであろう、どっこいPower Mac G4の方が速いんである。Power Mac G5のPCI-Xスロットは安物のFireWire拡張カードがお口に合わないのかPower Mac G4のPCIスロットに装着した場合に比べて2/3くらいのスピードしかでなかったのだ、トホホ。
信頼性が低い
Xserve RAID(RAID5)に比べ冗長性が全く無いためドライブの故障によるデータ損失の確率が高い。

この逆が全てXserve RAIDの利点と言える。そして、なんといってもXserve RAIDの最大の利点は見た目が派手でカッコいいということ。部屋の照明を暗めにして負荷を示すLEDが伸び縮みするのを楽しんでしまう。お金が余ってたらぜひ欲しい。でもものすごく冷却ファンがうるさいので一般の御家庭には向かない。

(2004-10-05)

2004年10月19日にXserve RAIDの新型が発表され、容量や価格等が変わった。新型Xserve RAIDのNews Releaseには、 「それぞれが512MBのキャッシュを装備した2基の独立したRAIDコントローラが380MB/sを超える安定したスループットを実現します」と書かれている。44MBもパワーアーップしたらしい。

(2004-10-20)

某I社様に納品するXserve RAID 5.6TBをセットアップするついでに、Power Mac G5 2.5GHz Dualに接続してシーケンシャルライト速度を計らせてもらった。I/Oブロックサイズ256KBで10GBのファイルを書き込むのにかかった時間は、旧製品 116.95秒、新製品 116.18秒。う〜ん、あまり変わらんように見えるが?また幻覚か?(^^;

Xserve RAID 5.6TB、2台合わせて11.2TBなり。

(2005-1-18)

2005年2月2日ニュースサイトascii24.com Mac24に掲載されたアップル社サーバー製品に関する説明会についての記事(プレゼンテーション中のスクリーンを撮影したと思われる写真)によるとRAID50でのリード/ライト パフォーマンスはRead 380MB/s, Write 322MB/sらしい。単純に片チャンネルで半分としてWrite 161MB/sは出るちゅうこと? ユーザーがアップルと同じ状態を手元で確認できるように計測ツールを提供してくれないないかなあ。

(2005-2-3)

※文中の「ソフトRAID」という表記がSoftRAID, LLCの製品である「SoftRAID」と紛らわしいので書き換えた。
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