2024-08-15/2024-08-25
C/C++プログラミングを学ぶためにQtのコミュニティー版(オープンソースライセンス)を導入してみてはいかが、という話の続きです。
2024-08-15時点において、Qt 6による開発環境を構築する手順を軽くまとめてみました(公式なインストール手順はQtウェブサイトのQt Documentation「Get and install Qt」にあります)。
前準備としてコンパイラを含むビルドツールをインストールしてから、Qtをインストールする、という大まかな手順はWindows、macOS、Linuxのどれでも同じです。
けれども、それぞれのプラットフォームごとに標準的なコンパイラが、MSVC、LLVM(Clang)、GCCである、という違いがあります。そんなわけで前準備は、あなたが使用しているOSによって異なってきます。
それでは、インストール手順を説明して参りましょう。
マイクロソフトのウェブサイトにあるVisual Studio製品のページ https://visualstudio.microsoft.com/ja/downloads/ から、Visual Studio 2022 (MSVC)をダウンロードしてインストールします。 個人の場合は無料のコミュニティ版が利用できます。
ワークロード「C++ によるデスクトップ開発」にチェックを付けてインストールしましょう。
別の方法:Visual Studioは巨大なので、訳知りの人はコマンドライン・ビルドツール「Build Tools for Visual Studio 2022」だけをインストールしても構いません。
もうひとつの手抜きな方法:Visual Studioとは別のビルドツール「MinGW」を使う場合は、ここでビルドツールをインストールする必要はありません(Qtをインストールする際に同時にインストールできます)。
Qtコミュニティー版のダウンロードページ https://www.qt.io/download-open-source から Qt Online Installer for Windows をダウンロードします。
qt-online-installer-windows-x64-4.8.0.exe のようなインストーラー実行ファイルが手に入るので、実行します(「ファイルを開く」)。
App Storeアプリ ('App Store.app') を起動し、Xcodeを入手してインストールします。アップルの開発者向けサイトからアーカイブファイルをダウンロードしてインストールする方法もあります。どちらにしてもApple IDが必要です。
別の方法:Xcodeは超巨大なので、訳知りの人はターミナルから次のコマンドを実行してコマンドラインデベロッパツールだけインストールしても構いません。
% xcode-select --install
Qtコミュニティー版のダウンロードページ https://www.qt.io/download-open-source から Qt Online Installer for macOS をダウンロードします。
qt-online-installer-macOS-x64-4.8.0.dmg のようなディスクイメージファイルが手に入るので、その中に含まれるインストーラーアプリケーション qt-online-installer-macOS-x64-4.8.0.app を起動します。
ファイル名に「x64」が含まれることから想像される通り、Apple シリコン搭載のMacでは Rosetta が必要になるのでインストールします(Intelプロセッサ搭載のMacなんて、きょうびアップルは売ってないんだけどね)。
事前にRosettaをインストールしておくには、ターミナルから次のコマンドを実行します。
% softwareupdate --install-rosetta --agree-to-license
https://doc.qt.io/qt-6/linux.html の解説に従って必要なビルドツールやライブラリを準備します。
$ sudo apt install build-essential libgl1-mesa-dev
$ sudo apt install libxcb-cursor0
Qtコミュニティー版のダウンロードページ https://www.qt.io/download-open-source から Qt Online Installer for Linux (64-bit) をダウンロードします。
端末上でダウンロード先のディレクトリへ移動し、ダウンロードしたインストーラー実行ファイルに実行権限を与えて起動します。
$ chmod +x qt-online-installer-linux-x64-4.8.0.run
$ ./qt-online-installer-linux-x64-4.8.0.run
Linuxでは、Qt Online Installerを使わず標準のパッケージ管理システムだけを使って、Qt 6をインストールすることもできます。次のコマンドラインを実行します。
$ sudo apt install build-essential cmake
$ sudo apt install qt6-base-dev qtcreator
最新版 Qt 6.7.2/Qt Creator 14.0.1 ではなく、やや古いバージョン Qt 6.4.2/Qt Creator 13.0.0 になりますが、それでもよければ、こっちのほうがお手軽です(Qtアカウントの開設も不要)。
Qtオンラインインストーラーが起動したら、その後の画面構成/操作手順は、Windows、macOS、Linux、どれでもおおむね同じです。いわゆるウィザード形式なので、各画面の要求にこたえながらインストールのステップを進めていきます。
最初の「ログイン」ステップで、Qtアカウントの情報を入力してログインします。 オンラインインストーラーの利用には、Qtアカウントが必要です。はじめてのインストールの場合、まず「登録」をクリックしてアカウントを作成してください(以前のQtでは誰でもオフラインインストーラーを利用できたのですが、Qt 5.15以降オフラインインストーラーは商用ライセンス契約者にしか提供されません)。
Qtはマルチプラットフォーム対応の超多機能フレームワークであるため、数多くのコンポーネントから構成されています。 C言語あるいはC++言語の学習に使うのであれば デスクトップアプリケーションの開発環境だけインストールすればOK です。
「インストール フォルダー」ステップまで進み、「カスタムインストール」を選ぶとインストールするコンポーネントを自分で調整できます。面倒くさがりの人は「デスクトップ開発用のQt 6.7」を選択すれば標準的なコンポーネントが自動的にインストールされます。
この記事を書いている時点の最新バージョンは Qt 6.7.2 です。
「コンポーネントの選択」ステップで、「Qt › Qt 6.7.2」の中の必要な項目にチェックを付けます。
Windowsでは「MSVC 2019 64-bit」をチェックします。 ついでに「Qt Debug Information Files」もチェックしておくとよいでしょう。
macOSでは「Desktop」をチェックします。
Linuxでは「Desktop」をチェックします。 ついでに「Qt Debug Information Files」もチェックしておくとよいでしょう。
もっとも、純粋に、C言語、C++言語を標準規格の範囲内でお勉強したいだけ、という方はQtフレームワーク(Qt 6.7.2の項目)をインストールする必要はありません。
その場合、 QtのIDEである Qt Creator アプリケーションだけ使えればよい ので、「Qt › Qt Developer and Designer Tools」の中のデフォルトでチェックが付けられている項目だけ残し、他のコンポーネントのチェックは外して構いません。
選択したコンポーネントのインストールが完了したら、Qt Creator を起動してみます。
これで、QtによるC/C++プログラミング学習環境が整いました。 続いては、お決まりのHello world(ハロー・ワールド)でもやってみましょう。
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